中国市場で急成長する象王クリーニング

  黄 進能(台湾象王国際集団 上海象王洗衣有限公司総経理)

 台湾象王国際集団は1979年に設立し、洗濯設備、クリーニング業務用品及び資材の専門生産を行いました。また、私は台湾のクリーニング業界発展のために、1994年に台湾洗濯機械資材情報協会を設立し初代会長の役を務めました。現在協会員は120数社であり、1996年には「洗濯世界」という雑誌を同協会で創刊しました。同年の9月に台北の世界貿易センターで機械資材展示会を開催し、国内外数多くの業界人の注目を集めました。それ以来、現在でも2年に1回台北、台中、台南で展示会を開催しております。

最初の中国大陸クリーニング市場視察

1994年に中国軽工業機械協会クリーニング専門委員会の招きに応えて、初めて台湾と大陸クリーニング業界の同業者交流会に参加しました。北京で開催された中国クリーニング設備博覧会を見学しましたが、当時は展示会の規模がかなり小さいとの印象が残りました。

上海市内の一般的な旧式店舗

  同時に我々は北京、上海、広東省のクリーニング市場を視察しましたが、3都市にはクリーニング店が多いといっても規模が小さく、見た目の印象は汚く粗雑であると感じました。 私は自らこんなことを体験しました。上海のクリーニング店で、洗濯から仕上げの作業手順を観察していたところ、来店客があり、服についているシミがとれるかどうかとの質問に対して、店の経営者はパークロルエチレン溶剤の入ったボトルを出して、当然のように溶剤を服にかけて、手でこすってから落ちないと答えました。呆れた私が 服の汚れはいつもこんなふうに処理するのですかと聞いたところ、彼は確かにそうだと言い放ちました。当時の感想はびっくりしたというより情けないという気持ちが強く、中国のクリーニング市場は発展を待たねばならないと思いました。 その後、私は1996年と1997年に再び中国の現地視察を行い、中国の都市が近代化に向け激変したこと、クリーニング業界もある程度発展したこ とを知りました。そこで私は、象王というクリーニングブランドを中国市場に打ち立てようと決心しました。

驚異的な発展を遂げる上海

 中国本土における象王チェーンの発展 北京、上海と広東省を考察してみると、上海の経済が特に急速に発展しており、市場としての潜在力が最も大きいと考え、1998年11月18日、上海を象王の進出拠点とすることにしました。当初、台湾と同じ経営管理で望んだのですが、効果はあまり上がらず、実情に即していないことがわかりました。

上海に開業した象王1号店、長蛇の列ができた

 異なった市場に入るためには、まずその社会に融けこむことを学ばなければならない、または現地の風土と人情を理解しなければならないということに気づきました。「郷に入りては郷に従う」必要があるということです。そこでまず、管理スタッフを少しずつ台湾人から現地の上海人に換え、製品も全輸入から部分輸入に変えました。

象王チェーンの最新店舗

 2000年からはフランチャイズチェーン事業を発足させ、わずか3年の間に中国の20数の省市において、200数店舗の加盟を得て、「中国著名商標」、「全国クリーニング企業トップテン」に取り上げられる成功を収めました。2002年には、ISO9001:2000品質管理体系認証を取得し、中国チェーンストア経営協会の理事にも就任しました。象王の急速な発展は多くの地方政府にも注目され、それに応じて援助を得ることに成功しました。現在我々は積極的に香港での株式上場の準備を行っております。 象王がわずか3年という短期間で急速な発展を実現できたのには、五つの独自な経営的な特徴があったからです。 1.ドライクリーニングの環境対策 2.特殊な汚れやシミへの対策 3.消費者への作業工程の公開 4.毛皮やレーザー等高級品の洗浄及び真空包装 5.大陸側との複合式経営 我々のスローガンは「汚れが落ちなかったら象王へ」というもので、技術、サービス、そして包装等の優位性から同業他社との距離をひらきました。

フランチャイズチェーン加盟店舗の管理

象王クリーニングの経営方針は、価格の戦いではありません。象王は中高所得層の顧客が対象です。クリーニングの品質を確保するために標準化されたクリーニングプロセスを研究し、加盟店舗のマニュアル経営を図っています。また同時に、加盟店舗が同業他社よりレベルを向上させるために、品質とサービスのほか包装にも力を入れなければならないと要求しております。加盟店が、できる限り早く投下資本を回収するために、プリペイドのクリーニングICカードを作りました。これから象王のICカードは中国全土共通で使用できるようになります。また営業と販売をいかに推進するかについて、継続的に我々は加盟店舗に業務指導を行い、これらのことによって加盟店舗の事業の成功をサポートして、本部と加盟企業の「両者の勝利」を実現します。

フランチャイジー開発担当の曹特許経理部経理

本社内は多くのコンピュータと若いスタッフが目に付く

中国大陸市場

大陸にまだ進出していない頃、中国の市場に対するはっきりとした認識は殆どありませんでした。この市場に入ってから私は、遼寧省、吉林省、黒龍江省、内モンゴル、重慶、昆明、遠くは新疆ウイグル自治区などまで行きました。新疆ウイグル自治区は、上海から飛行機で4時間半もかかり、そこでやっと中国本土の広さが分かるようになりました。中国は5千年の歴史と文化を擁し、省23、直轄市4、自治区5、特別行政区2、そして地方都市900に近く、総人口は13億に上ります。中国経済の高速発展は世界中誰もが認めるところで、中国に溢れているビジネスチャンスは限りがないともいえます。中国市場に進出するためには、中国の法律や規定規則等を理解しなければなりません。中国では都市によって法律や規定規則等が異なっており、また地方保護政策が発揮される地域もあるからです。それとコネクションも必要です。これらの要素が分からなかったら、少しも動くことができません。

店舗受付は清潔なイメージ

フランチャイズ店の洗濯設備

ポリ包装された仕上がり品

中国にある200数万店舗の洗濯店

「200数万店舗」この数字を見た時、おそらく日本のクリーニング業界人は驚愕することでしょう。この数字は中国の洗染専業委員会の統計によるものです。 中国には既に過剰なクリーニング店があり、中国でビジネスを広げるチャンスは存在しないと思われるかもしれません。ここで私は自信を持って言うことができます。中国ではクリーニング事業を展開する空間はまだまだ広い。何故なら、中国における200数万店舗といわれるクリーニング店の殆どは極めて小規模な店で、なかにはタライ一つとか店名だけというものもあります。要するに中国語のことわざで羊頭狗肉としか言いようの無いものがほとんどなのです。 「人間は衣服で飾られ仏様は金で飾られる」との諺からもお分かりいただけるように中国人は礼儀作法を相当に重視しています。中国の人々は出かけるときや仕事に行くとき、または親族や友達に会いに行くときなどには、きちんとした洋服を着ます。このことが我々の業界に無限のビジネスチャンスを与えてくれました。中国政府は2010年には、人口一人当たりの年収は7000USドル(約80万円)になると推計しています。この数字は非常に魅力があると考えられ、象王の中国における発展の将来性はもっと大きなものとなるでしょう。

中国クリーニング市場の概況

中国洗染専業委員会の調査によると、中国市場における60%以上の店はパークロルエチレン溶剤ドライ機を使っており、基本的な開業資金は2万人民元(約26万円)だけで、設備としては一台のパークロドライ機とアイロン仕上げ機で、水洗機はほとんどありません。水洗が必要なものはすべて手洗いで解決します。 現在中国で6キロ開放式パークロドライ機は13,000~17,000人民元(17万~22万円相当)、アイロン仕上げ機の価格は600~1,000人民元(7,800~13,000円相当)です。また設備の無い店は全体の30%を占めております。これらの店のいわゆる「ドライクリーニング」はシミ抜きだけで済ませています。石油系溶剤を使う業者は全体市場の9.5%であり、残りは密閉式パークロドライ機を使っています。クリーニング料金はまだ低価格を中心としており、背広上下のドライクリーニング料金は7~11人民元(90~150円相当)です。

 本社研修室において加盟店の技術研修が行われる

 中国消費者協会の統計を見れば、クリーニング業界へのクレーム率は全業種で第10位になっており、主要な原因は業界の統合標準がないこと、殆どの従業員が育成訓練を経験してないとのことからです。21世紀になって衣料品の素材は従来の伝統的なものと大きく変わり、クレームになりやすくなっています。このことから中国の洗濯市場は標準化されることを待たねばなりません。

中国クリーニング市場の未来図

中国はWTOに加盟したことによって、2005年にサービス業界全体は完全開放されることになり、世界各国のクリーニング業界のトップ業者が相次いで中国市場に進出し、市場における競争は益々激しくなるはずです。

フランス資本で進出した福奈徳

 また、ある時期には、クリーニング市場にとって本物の「緑色革命=厳しい環境規制」が行われ、規範を守らない業者は次第に淘汰されます。例えば中国クリーニング業界の老舗である国営「上海正章クリーニング会社」は、既に125年の歴史を持っていますが、技術やサービス、そして管理等はまだ古い時代に留まっています。もしこの会社が現在の体制を変えなければ必ず市場に対応できなくなるでしょう。  中国経済は外資企業の進出が絶え間なく増え続けることによって、消費意識に根本的な変化が現れました。私の個人的な予測ですが、2008年の北京オリンピック、そして2010年の上海万国博覧会の開催によって、中国の不動産業界は2006年にピークになり、この情勢の下で小規模の店舗は高額の家賃に耐えられなくなり次第に廃れる結末になるでしょう。  今後のクリーニング業者は2種類に分けられると思われます。 一つは「前に店舗、後ろに工場」というパッケージプラントの形です。比較的に現在のクリーニング市場に適合しています。中国の人々は店舗の外観や内装、施設等を重視しており、このことから店内が綺麗で明るく、しかも高級感が溢れる店作りをしなければなりません。もちろん作業は透明化の必要もあります。 もう一つは「大規模集中工場」という形で、生産ラインによってコストを下げることができます。この経営方式は日本のクリーニング工場とかなり似ており、未来の発展動向によればきっと普及すると思われます。 今後、我々の努力によって、中国の洗濯市場はきっと飛躍的に発展します。私はずっとそう信じています。