植物系繊維への水の影響の実験

●植物系繊維は水素結合で形が保たれる

わかりやすい化学のお話です。  例えば、トイレットペーパーは、なぜ水に入れると溶けたように繊維がバラバラになるのでしょうか?

紙が水に濡れると、なぜ柔らかくなったり、破れやすくなったりするのでしょう?  簡単に言ってしまえば、これは「水素結合」という水の影響によって、結合したり、離れたりするという化学現象によります。

例えば、水洗いして脱水すると、ワイシャツなどにはシワがつきます。これを伸ばさずに乾燥させると、脱水の時の形のままに固まってしまいます。ちょっとしたシワ加工です。しかし、水に濡れるとこのシワはすぐに取れてしまいます。これが、水素結合の発生と解消ということです。

トイレットペーパーを構成しているものは、セルロース繊維という木材パルプを原料とする繊維です。トイレットペーパーに使う繊維は、特に短い繊維です。水の中ではバラバラですが、薄く漉き取って、乾燥させると繊維同士がからみ合ったまま固まって、紙になります。これを水に入れると、水素結合が解けて繊維がバラバラに戻るというわけです。

一般の紙の場合は、からみ合った繊維が長いので、水に濡れてもバラバラになりません。しかし、水素結合が解消されるので、繊維間の結びつきがゆるくなるので、柔らかくなったり、破れやすくなったりするというわけです。  綿、麻、レーヨンなども、紙と同じセルロース(植物繊維素)繊維ですから、水によって変形しやすくなるというわけです。

●植物系繊維は水を吸収して太く短くなる

セルロース繊維は、水を吸収する性質があります。

水を吸収すると、吸収した分だけ大きくなるのですが、太さが太くなると同時に長さが短くなるのです。このために、水で洗うと縮んでしまいます。

乾燥すると元の細さと長さに戻ります。しかし、織物や編み物などの構造では、縮んだ時の形のまま細くなるので、蒸気アイロンなどを使って、引き伸ばさなければなりません。

霧を吹いたり蒸気を使ったりする方が、生地が伸びる理由は、先に説明した水素結合による形状記憶が解消するからです。

●折り紙を使った実験で確認しよう

簡単な実験で、この事実を確認してみましょう。

正方形の洋紙の4辺を折った単純な折り紙を、水の上に浮かべてみて、その挙動を観察します。

  折り紙は、水の上に置くと、すぐに開き始め、30秒程度で平らな状態に開ききってっしまいます。

まず水は、接触した下の面から紙の繊維に浸透して行きます。このことによって、繊維は太く短くなろうとする力が働くことになります。また、折り目の部分の繊維も、この力が働き、内側に向かって折られていた折り目は、水面側に引っ張られることになります。

また、水素結合によって形状を維持していた折り紙は、水を吸収することによって結合が解消され形が変わりやすくなるというわけです。