絹織物の摩擦による損傷
ダウンコートを水洗い、タンブル乾燥したところ両袖口と左袖山が大きく裂けました。 外観の観察から、損傷発生部位が両袖口周辺、襟周り、左肩に集中していることがわかります。また、袖口など端部分の襞山のスレによる損傷が特徴的に見られます。 破損部分周辺の生地構造の状態を、透過観察したところ、破損部以外の部分でも繊維が損傷している部分が見られ、多少の力を加えると破損が拡大する状態にあることがわかりました。顕微鏡で繊維の状態を見ると、表面に現れているタテ糸の繊維が特に損傷が激しく、繊維が生地構造から引き出されている部分もあり、摩擦による損傷であると判定されます。 襟のフード留め金具の接触する部分にも特徴的な損傷が見られ、この破損が長期間にわたる摩擦によって摩耗したものであるといえます。特に、両袖口周辺、襟周り、左肩に集中していることは、通常着用中に大きな摩擦力のかかる部分であり、左肩口に関しては…
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