金属繊維を織り込んだダウンジャケット?

●ステンレス金属繊維

10数年前から、金属繊維を織り込んだ生地の製品が作られるようになりました。表示でも「金属繊維」という指定用語で表記されています。外国語表記では略号を使って「MT」などと表記されます。

金属繊維が使用される目的は、金属的な風合いや光沢、凹凸のある立体的なシルエットのために形状記憶金属として使用されています。

このような使用目的の場合、一般的にステンレススチールが使用されています。簡単に言ってしまえば、細い針金が織り込まれているということです。

 

 ●金属疲労によって折れたりさびたりする

針金は、折り曲げを繰り返すと金属疲労という現象を起こして折れてしまいます。肘などの部分に変化が無いか確認する必要があります。金属繊維が折れると手で触れた時に、かすかな引っ掛かりやザラっとした感触があります。脇や襟周りなど汗が付きやすい部分では、いくらステンレスとはいえ、さびが発生することがあります。さびが発生すると、黒っぽいシミになります。

●ダウンジャケットの表地に使用した場合

クリーニングによって、全体にざらつき感が出たこのダウンジャケットは、金属繊維に凹凸の形状を記憶させて、デザイン性を維持した製品です。

生地表面を実体顕微鏡で観察すると、金属繊維が露出している部分と、露出していない部分があることが分かります。露出した金属繊維は、ヨコ糸に抑えられた部分ではヨコ糸を持ち上げるように力が働いた形跡があり、ヨコ糸に抑えられていない部分では、大きく波打っています。

また、詳細に観察すると、随所で金属繊維が切断されています。これによって、外観、風合い変化が発生しているものとみられます。

 

  この製品の全面に金属繊維の歪み(波打ち)や切断が発生していることから、洗浄・乾燥時の回転作用や乾燥熱による金属の延伸現象などによって、金属繊維が変形断裂したものであるとみられます。

しかしながら、ダウンジャケットのような中綿製品の場合、加熱しながらの回転乾燥によって、中綿のダウンなどが解れ嵩高性(ふくらみ感)が増すという効果があり、この種の製品であれば、洗浄再利用に配慮するならタンブル乾燥に耐えられる製品作りが求められるものと考えられます。製品設計上、リユース性能に問題があるといえるでしょう。