国際標準ISOと違う日本のウェット

日本の一般クリーニングで行われているウェットクリーニングは、ドライクリーニング後に、全体に染みついた汗成分など水溶性の汚れを溶出させることを目的としたものです。このため「汗抜き」などの名称も使われています。ほとんど機械力が加えられることは無く、水による形態変化を最小限にとどめるために浸し込むだけの作業が取られています。

実は、このような「汗抜き」を目的とした水処理は欧米のクリーニング店では行われておらず、日本独特のものなのです。

日本の「汗抜き」は、洋服文化を生んだヨーロッパとは異質な気候風土によって生まれたものです。地中海性気候に代表されるヨーロッパの気候は、夏季においては日本のような高温になることが無いばかりではなく、雨量が減少して乾燥状態になります。しかし、温暖湿潤気候である東アジア地域では、高温多湿となり、発汗量が増えるため、服飾製品に大量の汗成分が吸収されることに対応したものです。

●新絵表示のウェットと汗抜きウェット

近年の内に実施が予定されている新しい絵表示制度では、ウェットクリーニングのマークがプロの業者による作業として準備されています。

新絵表示:ドライマーク(左)、ウェットマーク(右)

 ウェットマークは、ヨーロッパに本部を置くISO(国際標準化機構)が作成したものでの、その意味は日本で行われているドライを補完する「汗抜き」とは違って、独立した洗浄方法です。日本の「汗抜き」は、ドライ処理したものを水に浸し込む作業ですから、これだけでは油性汚れや不溶性汚れなどは十分に落とすことがでません。

 ISOの立案したウェットクリーニングの背景には、ドイツを始めとするヨーロッパでのパークロールエチレンに対する厳しい公害規制があり、ドライクリーニングの代替洗浄法として、用意されたものです。このことから、その試験方法も、洗濯脱水機による洗浄方法となっています。

 従来の「汗抜き」と新絵表示の「ウェット」は、全く意味が違うということになり、表示する側とクリーニング業界で用語の混乱が生じる恐れがあります。

●アパレル業者の理解

 最近のファッション製品の絵表示には、「ドライ不可」とするものが増えています。

    
 この絵表示が付けられた製品は、顔料吸尽染色によるビンテージ効果を表現した綿100%コートですが、ドライクリーニングすると、顔料が脱落することになります。このことを理解している表示担当者は、「ドライ不可」という表示を選んだものと考えられます。

 しかし、この製品をクリーニング店に出したら、絵表示は現状としてクリーニング業者を対象としていませんから、独自の判断でドライクリーニングしてしまい、事故となるかもしれません。

 2014年の新絵表示では、「消費者及び商業クリーニング業者を支援するため」とされることになりそうです。そうなると、表示する側には、業者に対する責任が発生するわけですから、ポリウレタンコーティングや塩化ビニル、顔料による加工製品などは「ドライ不可」「ウェット可」という表示になることが予想されます。また同時に、クリーニング業者には絵表示に従う義務も生まれるということになります。