垂直に伸びる毛羽の消失

 毛80%、ナイロン20%の黒の表地のコートを、石油系ドライクリーニングし、納品後に消費者から前身頃右下部分に損傷が発生しているとの申し出がありました。  外観観察では、損傷部分は、前身頃右下部分に柳葉状にほぼ垂直に発生しています。 また、損傷状態を実態顕微鏡で観察すると、基布部分は大きな損傷はなく、毛羽だけが消失しています。  損傷周囲の繊維を採取して、光学顕微鏡で観察したところ、先端部分が膨らんだ羊毛繊維が見られました。羊毛繊維の先端が膨らんでいる状態は、高熱が加えられることによって繊維に含まれる気泡が膨張するためです。また、溶解したナイロン繊維とみられる樹脂も見られます。羊毛繊維は、205℃で焦げはじめ、300℃で炭化します。 このことから、この損傷は通常のアイロン温度を超える熱源によって、炭化損傷したものであるといえます。 損傷の形状から、なんらかの炎(ライター、ロウソク…





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