硫化染料による綿繊維の脆化
ダウンジャケットを石油系溶剤ドライクリーニング後、乾燥工程から取り出したところ、左前身頃から全体に激しく脆化し、生地が剥がれ落ちました。 損傷を受けている生地は、粉状にまで分解しています。綿素材がここまで分解する要因としては、硫酸による影響以外には想定できません。 損傷部分は、湿気を含んだ状態であり、塩酸や水に比較して極度に蒸発速度の遅い硫酸を含んでいる可能性が高いといえます。損傷した繊維屑を、精製水に溶かし、リトマス試験紙によるpH試験をしたところ、pH2の強酸反応が検出されました。この数値から硫酸を含んでいるとほぼ判定できます。 硫酸は劇物であり、このように大量の硫酸が、日常着にかかる可能性は低いといえます。 日常での硫酸と接触する可能性といえば、自動車や船舶などに使用されているバッテリー液が挙げられます。バッテリー液は35%程度の希硫酸ですが、衣類に付着し、水分が徐々に蒸発す…
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